シマンドルでは、それまでに学習したポジションで演奏可能な音階が、順次登場します。例えばハーフ・ポジションではハーフ・ポジションのみで弾ける音階(ヘ長調・変ロ長調)ポジションⅠではポジションⅠのみで弾ける音階(ト長調)ポジションⅡではポジションⅠポジションⅡで弾ける音階(ハ長調)・・・といった具合に。

 音階を練習する目的の一つは、調号に慣れ親しむことです。調号とは、音部記号・拍子記号の右隣に表記されている♭(フラット)♯(シャープ)のことで、調によってどの記号がいくつどの音につくかは決まっています。この項はシマンドルにそって学習を進めていくものなのでその辺についての詳細な説明は省きますが、練習の時は丸暗記で結構ですので、調の名前と調号を関連付けて覚えるようにしてください。
また、音階練習は何度も繰り返し練習することをおすすめします。他の練習曲はポジションが進むのと同時にどんどん先へ進めてしまって良いのですが、音階練習は現在どのポジションを学習しているかに関わらず、下記で説明するような様々なパターンで、積極的に復習するようにしましょう。




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画像A

 実際の譜面を見てみましょう。画像Aは、10ページに記載されているヘ長調音階(F Major Scale)です。ヘ音記号の右隣には♭が1つ、シについています。ご覧のとおり、下記の譜面には拍子記号も小節線もありません。まずはゆっくりなテンポで(四分音符=60程度)、表記通り全音符で4拍づつ弾いて練習し、音や指使いを覚えましょう。それができるようになったら、音の長さやリズム・強弱などを変えて練習してみてください。以下に一例を示します。


①音の長さを変える


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画像B
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画像C

 単純に、音の長さを変化させた例です。同じ音の長さでも、弓をどれだけ使うかによって音量・音質が変わるので、目的に合わせて工夫してみましょう。 画像では元の表記(全音符)より短く音を変化させていますが、逆に音を長く変化させて、弓をゆっくりコントロールする練習も効果的です。


②スラーをつける


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画像D

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画像E

 スラーが付いている間は、音と音の間を切れ目を感じさせないよう滑らかにつなげるため、弓を返さず演奏してください。同じ弦でのスラーが続く場合は左手でテンポを作ることになるので、スラーがないときに比べるとテンポにはめるのが難しくなっています。


③リズムを変える


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画像F

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画像G

 画像Fのように一つの音についてリズムを変化させたり、画像Gのように次の音に移動するリズムを変化させるパターンです。楽曲を練習している時に自分が苦手なリズムパターンを見つけた場合、それを音階練習に取り入れて慣れるまで繰り返してみるのもいいかと思います。


④強弱をつける

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画像H
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画像I

 音階に音の変化をつけてみましょう。画像Hは、静かな出だしから頂点に向かってクレッシェンドをかけ音量を膨らましていき、上がりきったら今度は終息に向かって徐々に音量を落として静かに収める、といった形。初めは弓の真ん中より先を小さく使い、音量が上がっていくに連れ弓の量をだんだん増やしていき頂点で全弓、下降型に入ってからはどんどん弓の量を減らしていく・・・という感じです。
画像Iは長い音で、終始出来る限り小さな音で弾く形。小さな音量で長く音を持たすのは、とても繊細でコントロールの難しい練習です。実際に楽曲中にでてきても綺麗に演奏できるよう、まずはこういった単純な形でコントロールを習得しておいてください。


⑤様々な形の複合


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画像J
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画像K

 リズムの変化やスラーなどを同時につけた例です。こういった複合型は、上記の練習に習熟した上で行ってください。


⑥指使いを変える


 同じ音階でも、様々な指使いで演奏することが出来ます。音階に於いて効率的かどうかはさておき、色々な指使いを覚えておくことは後々役に立ちます。
簡単な例を示します。画像Lは、ポジションⅠで出てくるト長調音階(G Major Scale)です。

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画像L

 あまり画像が綺麗ではないので、これを譜面記入ソフトに入れ直したものを下記(画像M)に掲載します。

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画像M

 ポジションⅠ学習時点では画像M通りの指使いしか出来ませんが、ポジションⅡを習得することで、赤枠で囲ってある部分において別のとり方ができるようになります。

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画像N

 画像M画像N赤枠部分をご覧ください。画像Mでは【4→0→0→4】だった所が画像Nでは【2→4→4→2】に変わっています。この2も4もD線のポジションⅡでとり、G線の開放弦は使用しません。このように、ここで上げた例では一部分ですが、同じ音階を別の指使いで取る練習も取り入れてみましょう。



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 上述の例以外にも、あえてボーイングを逆にして弾いてみるなど、自分で様々なパターンを考えて練習してみましょう。演奏技術の引き出しが多くなるほど、楽曲を演奏する際の対応力が上がります。